最低で大嫌いなあなた、結婚してください
「……え?」
顔を上げた祥吾は、キョトンと目を瞬かせる。
鞠花が彼の前から姿を消した理由を、その程度の事としか思っていなかったのが、腹立たしくもある。
けれど鞠花も何も言わなかったのだから、彼が事情を知らないのは仕方がない。
分かっていても、やるせない想いがこみ上げて感情が昂ぶってくる。
「…………っ、あなたは…………っ」
鞠花は自身のセーターの胸元をギュッと掴み、震える声で何かを言いかけ涙を零す。
「鞠花?」
彼女がなぜ泣いているのか分からない祥吾は、心底困った表情で手を伸ばし、鞠花の手を握ろうとする。
けれどそれをパッと払われ、祥吾は表情を固くする。
今まで鞠花から、ここまで明確な〝拒絶〟を示された事はなかったからだ。
鞠花はグスッと洟を啜り、必死に荒ぶる感情を抑える。
「すみません、……少し待ってください」
彼女はそう言って深呼吸をし、必死に気持ちを落ち着かせていく。
数分後、鞠花は祥吾をまっすぐ見つめて言った。
「……あなたが〝鳳祥吾〟だと知っていたら、私はあなたと付き合いませんでした。事件を起こした秘書さんがあなたを刺さなければ、私があなたを殺そうとしたかもしれません」
「――――っ」
祥吾は大きなショックを受け、目を見開く。
彼はしばし呆けたあと、無理矢理微笑もうとしたぎこちない表情で尋ねる。
「……ど、どうしてだ? そんなに怒らせてしまったか?」
やはり何も分かっていない祥吾に、鞠花は彼に言わずにいた両親の事を打ち明け始めた。
「……私が十七歳の時、両親は自殺しました」
それを聞き、祥吾は強張った表情のまま息を止める。
今まで聞かなかった、触れようとしなかった鞠花の過去が、このタイミングで明かされようとしている。
彼女が姿を消す前ではなく、今だ。
鞠花は〝大井修吾〟なら問題なかったのに、〝鳳祥吾〟は駄目だと言う。
――彼女の両親の死に、自分が関わっている?
あまりに悪すぎるタイミングにそう考えた祥吾は、必死に「だが俺は彼女の事を、今まで認識していなかった」と自分に言い聞かせる。
鞠花は祥吾の葛藤を無視し、淡々と語った。
顔を上げた祥吾は、キョトンと目を瞬かせる。
鞠花が彼の前から姿を消した理由を、その程度の事としか思っていなかったのが、腹立たしくもある。
けれど鞠花も何も言わなかったのだから、彼が事情を知らないのは仕方がない。
分かっていても、やるせない想いがこみ上げて感情が昂ぶってくる。
「…………っ、あなたは…………っ」
鞠花は自身のセーターの胸元をギュッと掴み、震える声で何かを言いかけ涙を零す。
「鞠花?」
彼女がなぜ泣いているのか分からない祥吾は、心底困った表情で手を伸ばし、鞠花の手を握ろうとする。
けれどそれをパッと払われ、祥吾は表情を固くする。
今まで鞠花から、ここまで明確な〝拒絶〟を示された事はなかったからだ。
鞠花はグスッと洟を啜り、必死に荒ぶる感情を抑える。
「すみません、……少し待ってください」
彼女はそう言って深呼吸をし、必死に気持ちを落ち着かせていく。
数分後、鞠花は祥吾をまっすぐ見つめて言った。
「……あなたが〝鳳祥吾〟だと知っていたら、私はあなたと付き合いませんでした。事件を起こした秘書さんがあなたを刺さなければ、私があなたを殺そうとしたかもしれません」
「――――っ」
祥吾は大きなショックを受け、目を見開く。
彼はしばし呆けたあと、無理矢理微笑もうとしたぎこちない表情で尋ねる。
「……ど、どうしてだ? そんなに怒らせてしまったか?」
やはり何も分かっていない祥吾に、鞠花は彼に言わずにいた両親の事を打ち明け始めた。
「……私が十七歳の時、両親は自殺しました」
それを聞き、祥吾は強張った表情のまま息を止める。
今まで聞かなかった、触れようとしなかった鞠花の過去が、このタイミングで明かされようとしている。
彼女が姿を消す前ではなく、今だ。
鞠花は〝大井修吾〟なら問題なかったのに、〝鳳祥吾〟は駄目だと言う。
――彼女の両親の死に、自分が関わっている?
あまりに悪すぎるタイミングにそう考えた祥吾は、必死に「だが俺は彼女の事を、今まで認識していなかった」と自分に言い聞かせる。
鞠花は祥吾の葛藤を無視し、淡々と語った。