最低で大嫌いなあなた、結婚してください
彼女はしばらくのあいだ、声を上げて号泣し続けていた。
普段の鞠花は冷静で理知的だと知っているからこそ、祥吾は心臓を万力で締め付けられる思いを味わった。
――どうするべきだ。
己に問うても過去は変えられないし、答えは一つしかない。
――今度こそ心から改心し、彼女に一生尽くす。
しかし、鞠花が受け入れてくれるかは分からない。
やがて鞠花は落ち着きを取り戻し、鼻をかむと溜め息をつく。
「……あなたが大井修吾ではなく、鳳祥吾だと知った時、『刺されるかもしれない』と言っていた事を納得できました。あなたはまごうことなきクズで、最低な人間だから」
愛する女性に忌憚なく言われ、祥吾の胸の奥がズグンと痛む。
だが鞠花にはそう言う権利があるし、彼女は何一つ間違えていない。
「私は修吾さんを愛しましたし、もしもプロポーズされたら受け入れようと思っていました。……だから、テレビであなたを見てその正体を知ったあと、姿を消す決意を固めました」
本当の理由を聞いた祥吾は、自分があまりにめでたい勘違いをしていた事に、内心で苦笑する。
鞠花はちょっとやそっとの事で、何も言わず行方をくらます人ではない。
彼女にはそうするための立派な理由があった。
「……俺を殺したいと思ってる?」
苦く笑って尋ねると、彼女は視線を合わせずに言う。
「……思いました。でもどれだけ誰かを憎んでも、実際に行動を起こせば私が犯罪者になってしまいます。追い詰められた両親は、最後に私に【幸せになりなさい】と書き残しました。両親はあなたを恨んで自死したのではなく、最後まで自分たちのふがいなさに苦しんでいたと思います。私の両親は、自分の身に起こった事を誰かのせいにする人たちではありません。あなたやかなえ銀行を悪く言ったり、犯罪を犯そうとせず、自らの命を絶ったのが何よりの証拠です」
鞠花の声はまだ震えていたが、その声にはしっかりとした芯と誇りがある。
「だから私はあなたを殺しません。あなたにも、死んで楽になる選択肢など与えません」
顔を上げ、祥吾を見つめてキッパリと言い切った鞠花は、こんな時だというのに鮮烈な美しさを放っていた。
普段の鞠花は冷静で理知的だと知っているからこそ、祥吾は心臓を万力で締め付けられる思いを味わった。
――どうするべきだ。
己に問うても過去は変えられないし、答えは一つしかない。
――今度こそ心から改心し、彼女に一生尽くす。
しかし、鞠花が受け入れてくれるかは分からない。
やがて鞠花は落ち着きを取り戻し、鼻をかむと溜め息をつく。
「……あなたが大井修吾ではなく、鳳祥吾だと知った時、『刺されるかもしれない』と言っていた事を納得できました。あなたはまごうことなきクズで、最低な人間だから」
愛する女性に忌憚なく言われ、祥吾の胸の奥がズグンと痛む。
だが鞠花にはそう言う権利があるし、彼女は何一つ間違えていない。
「私は修吾さんを愛しましたし、もしもプロポーズされたら受け入れようと思っていました。……だから、テレビであなたを見てその正体を知ったあと、姿を消す決意を固めました」
本当の理由を聞いた祥吾は、自分があまりにめでたい勘違いをしていた事に、内心で苦笑する。
鞠花はちょっとやそっとの事で、何も言わず行方をくらます人ではない。
彼女にはそうするための立派な理由があった。
「……俺を殺したいと思ってる?」
苦く笑って尋ねると、彼女は視線を合わせずに言う。
「……思いました。でもどれだけ誰かを憎んでも、実際に行動を起こせば私が犯罪者になってしまいます。追い詰められた両親は、最後に私に【幸せになりなさい】と書き残しました。両親はあなたを恨んで自死したのではなく、最後まで自分たちのふがいなさに苦しんでいたと思います。私の両親は、自分の身に起こった事を誰かのせいにする人たちではありません。あなたやかなえ銀行を悪く言ったり、犯罪を犯そうとせず、自らの命を絶ったのが何よりの証拠です」
鞠花の声はまだ震えていたが、その声にはしっかりとした芯と誇りがある。
「だから私はあなたを殺しません。あなたにも、死んで楽になる選択肢など与えません」
顔を上げ、祥吾を見つめてキッパリと言い切った鞠花は、こんな時だというのに鮮烈な美しさを放っていた。