最低で大嫌いなあなた、結婚してください
「……俺はどうやって君に償えばいい?」

 祥吾に尋ねられた鞠花は、厳しい表情で答える。

「償われても、両親は蘇りません」

「……その通りだ」

 また沈黙が落ちたあと、鞠花は祥吾に尋ねた。

「あなたは本当に改心して、私を愛そうと思ったんですか?」

 そう尋ねられ、祥吾は必死に頷く。

「本当だ。鞠花のためにいい夫になりたいと思っているし、君が望むならすべてを差し出しても構わない」

 しばらく鞠花は、その言葉の真偽を問うように祥吾を見つめる。

 それに対し、祥吾は自分の想いが伝わるように、想いを込めて見つめ返すしかできなかった。

 彼女からの信頼がゼロに近い今、どんな言葉を重ねてもただの言い訳にしかならない。

 加えて祥吾は、鞠花が舌先三寸の言葉で誤魔化される人でない事も承知していた。

 二人は見つめ合ったまま、視線を外さずにいる。

 まるで無言の中で、精神的な戦いが繰り広げられているかのようだった。

 やがて鞠花は溜め息をつくと共に、視線を外す。

「……なら、私の言う事を聞いてください」

「何でも聞く」

 祥吾は覚悟を決め、しっかりと頷く。

「怪我が完治してからでいいので、今まであなたが雑に扱った人たちに対して、誠実に謝罪してください。謝罪を受けた人たちが許してくれるかは分かりません。でも謝罪せずに恨まれ続けるよりはマシです」

 言われた祥吾は「分かった」と頷いた。

 鞠花はそのあと、少し間を置いて自身の腹部に手を当ててから続ける。

「……私のお腹には、あなたの子供がいます」

「えっ?」

 思いも寄らない報告を受けた祥吾は、驚きの声を上げる。

 直後、彼は破顔して喜びを表そうとしたが、そういう場面ではないと自身に言い聞かせて衝動を抑える。

「嘘はついていません。私は祥吾さん以外の男性といっさい関わりを持ちませんでしたから」

「疑ってなどいない! ただ……、しっかり避妊したつもりでいたから、びっくりしてしまって」

 そう言うものの、彼は修吾として鞠花とデートを重ねていた時、何度も行為を重ねる間に一度避妊具が外れてしまった事を思いだしていた。

 それを無視して行為を続けたのではなく、気がついたのは事後だった。

 しかし可能性があるとすれば、あの時以外にあり得ない。
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