最低で大嫌いなあなた、結婚してください
「〝修吾さん〟が〝鳳祥吾〟さんだと分かった時、世界が終わったような衝撃を受けました。生まれて初めてまともに愛した人が、両親の仇だったんです。彼がよく『人から恨まれている』『いつか刺されると友人に言われた』と言っていたのを聞いた時は、恨みを買いやすい経営者ゆえの、ブラックジョークと思っていました。……女性とあまり真剣にお付き合いしていなかった話も窺っていましたし、その意味でも『持てる人は大変だな』と思っていた程度でした。……でも……」
鞠花は一旦言葉を切り、切ない笑みを浮かべる。
「忖度しない言い方をすれば、祥吾さんは本当に人から恨まれても仕方のない人でした。愛してしまったあとにそれに気づいた私は、色んな感情に見舞われ、今まで通り祥吾さんと付き合える自信がなく、逃げてしまいました。……でも姿を消す前に『別れましょう』と言えなかったのは、それだけ祥吾さんを愛していたからだと思っています。そう簡単に切り捨てられる想いではなかったのです」
鞠花は微笑み、彼の両親を見つめる。
「祖父母と一緒に暮らした仙台に戻り、色々と考えました。妊娠している事に気づきましたが、堕胎しようとは一度も思いませんでした。父親がどんな人であれ、生まれてくる子供には何の罪もありません。私が子供に新たな憎しみを教え、連鎖させるのは、決してしてはいけない事だと思っています」
テーブルの下で、祥吾がそっと鞠花の手を握ってきた。
その温もりに勇気をもらい、彼女はまっすぐ前を向いて言う。
「きっと私の両親も、憎しみに囚われて生きていく事を望まないと思います。両親の遺書には、志半ばに道を断った自分たちの不甲斐なさを恥じ、一人遺してしまう私への謝罪、幸せになってほしいという願いが書かれてありました。……だから、私は祥吾さんを憎みません。勿論、かなえ銀行もご両親の事も。……ただ、願わくば今までのような、弱者の足元を見るような行動を改め、祥吾さんには今まで傷つけてきた人に謝罪をしていただきたいです。そして、本当の意味で二人で再出発できたらと思っています」
鞠花は祥吾の手を握り返し、彼の両親に微笑みかけた。
「私の事を信じられないというなら、今後、嫁として扱わなくても結構です。ただ、生まれてくる子供には教育を受ける環境を与える事をお許しください」
そう言われ、母は気まずそうな顔で首を横に振った。
「……私はそこまで言っていないわ。……本当に二人が心から愛し合っているなら応援したいし、孫だって抱きたい」
彼女の言葉のあとに、「でも不安なの」と続くのが分かる気がした。
だから鞠花は精一杯伝える。
「私は誰の事も恨みません。これから幸せになりたいと思っているのに、その下に復讐心なんて隠しません。言いたい事があるならハッキリ言います。それだけは誓います」
鞠花は一旦言葉を切り、切ない笑みを浮かべる。
「忖度しない言い方をすれば、祥吾さんは本当に人から恨まれても仕方のない人でした。愛してしまったあとにそれに気づいた私は、色んな感情に見舞われ、今まで通り祥吾さんと付き合える自信がなく、逃げてしまいました。……でも姿を消す前に『別れましょう』と言えなかったのは、それだけ祥吾さんを愛していたからだと思っています。そう簡単に切り捨てられる想いではなかったのです」
鞠花は微笑み、彼の両親を見つめる。
「祖父母と一緒に暮らした仙台に戻り、色々と考えました。妊娠している事に気づきましたが、堕胎しようとは一度も思いませんでした。父親がどんな人であれ、生まれてくる子供には何の罪もありません。私が子供に新たな憎しみを教え、連鎖させるのは、決してしてはいけない事だと思っています」
テーブルの下で、祥吾がそっと鞠花の手を握ってきた。
その温もりに勇気をもらい、彼女はまっすぐ前を向いて言う。
「きっと私の両親も、憎しみに囚われて生きていく事を望まないと思います。両親の遺書には、志半ばに道を断った自分たちの不甲斐なさを恥じ、一人遺してしまう私への謝罪、幸せになってほしいという願いが書かれてありました。……だから、私は祥吾さんを憎みません。勿論、かなえ銀行もご両親の事も。……ただ、願わくば今までのような、弱者の足元を見るような行動を改め、祥吾さんには今まで傷つけてきた人に謝罪をしていただきたいです。そして、本当の意味で二人で再出発できたらと思っています」
鞠花は祥吾の手を握り返し、彼の両親に微笑みかけた。
「私の事を信じられないというなら、今後、嫁として扱わなくても結構です。ただ、生まれてくる子供には教育を受ける環境を与える事をお許しください」
そう言われ、母は気まずそうな顔で首を横に振った。
「……私はそこまで言っていないわ。……本当に二人が心から愛し合っているなら応援したいし、孫だって抱きたい」
彼女の言葉のあとに、「でも不安なの」と続くのが分かる気がした。
だから鞠花は精一杯伝える。
「私は誰の事も恨みません。これから幸せになりたいと思っているのに、その下に復讐心なんて隠しません。言いたい事があるならハッキリ言います。それだけは誓います」