パフェの魔法:それは、あなたが望んだ物語
 その一生懸命すぎる姿に、客席から小さな、けれど確かな笑い声が漏れました。

「おいおい、見ろよあのアヒル。ひっくり返りやがった」

「……ふふっ、なんだい。あんなに泥だらけになってまで」

 冷ややかだった広場の空気が、わずかに緩みました。

「ほら、頑張れアヒル! 転ぶんじゃないよ!」

 バイオリンを構えていた男が、アヒルにエールを送るように、力強く弦を弾きました。
 ギギッという軋む音さえ、今は希望の序曲のように響き渡ります。

 一人の子供が舞台に駆け寄り、アヒルの動きを真似て無邪気に踊り出すと、それを合図に広場中から歓声が沸き起こりました。

 釣られるように太鼓の音が勇ましく鳴り響き、チェロが深く力強い低音を刻みます。

 音楽の奔流に抗えなくなった大人たちも、一人、また一人と、重い腰を上げてステップを踏み始めました。

 パフェの傍らにも、一人の青年が清々しい笑顔で近づき、彼女の手を取って軽やかに舞い踊ります。

 一心不乱に踊り、汗を流す街の人々。

 彼らがパフェと視線を交わすたび、そこには絶望に代わって、眩いばかりの「生きた笑顔」が溢れ出しました。
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