せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
(どうせなら一度に……)
派手に直して驚かせよう。
そのほうがよろこぶだろうと思った。
複数の魔法を同時に発動させるのは、ハンスでも少し注意が必要だ。
大きく息を吐いて集中する──
セシルがピタッと泣くのを止めた。
一瞬たりとも見逃すまいと、大きく目を見開く。
完全に目を奪われ、ついには笑みまで浮かんできた。
それを見て、ハンスの表情も緩む。
(もう大丈夫だろう)
「うわあ、ありがとうございました!」
セシルは元通りになった物を回収し、今度は胸を張って抱える。
「二度とこういうことが起きないように、ロペス先生があの子たちにしっかりお話をしてくれているはずだけど、また物を壊されたときには僕のところに持っておいで。いくらでも直してあげるから」
「はい……でも、」
「うん? まだ心配事が?」
「……ママには言わないでほしいんです。内緒にしてください」
(そうか、それを恐れていたんだ)
ようやく分かった。
それなのに、
「それは、どうだろう。ロペス先生はお家の人に話さないといけないかもしれない」
こう言わなければならなかったことがツラい。
セシルの目にまた涙が溜まり始める。
「僕、ママを悲しませたくないんです」
「そうだね、そうだね。とても分かるよ」