せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 それの何がいけないのか、さっぱり分からない。
 周りに頼られはしても、イジメられる理由にはならないではないか。
 ハンスが腑に落ちていないのを見て取って、ロペス先生は説明する。

「鼻につく、とかではないんですよ。自慢したりするような子ではないので。ですが、どの子もこの学校に受かったときに、お家の方からたくさん褒められたことでしょう。そして、大きな期待を背負わされて入学してきたと思うんです。ところが、同じクラスに逆立ちしても敵わないほど優秀な子がいた……」

 黙って聞いていたが、疑問が浮かぶ。

(僕のときはどうだった?)

 セシルと同じだ。
 ハンスもまた入学早々に、その突出した優秀さで級友たちをあんぐりさせた。
 しかし、ハンスはイジメどころか、小さな嫌がらせの類いすら受けた経験はない。

「だからって、イジメるなんて……」
「年齢的に、道徳的なルールを破ることに関して考えが未熟なんでしょう。それと、偏見もあったようなんですね。彼、お父さんがいなくて、お家が裕福ではないんです。それなのに自分たちより優秀なのは許せない、という気持ちもあったと……」

(何てことだ!)

 脳天を撃ち抜かれたような衝撃が走る。

(セシルがイジメられた原因は僕じゃないか‼︎)

「今日のことがあったのでしばらくは大丈夫だと思いますが、今後のクラス運営には気をつけるつもりです」

 ロペス先生はそう言って締め括った。
 しかし、それを上の空で聞いた。

 就業時間終了と同時に、ハンスは慌てて退勤した。

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