せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
「だから、ロザリアさん側からもあなたと婚約してることを聞いたことがなかったんだと思う」
「……それについては、今から話すよ」
ロザリアは、家に金と権力があり、本人は器量よし、ととにかく兼ね備えていたため、相当な自信家だった。
しかし、その実、そう振る舞っていただけだった。
全てにおいて1番でなければ許せなかった彼女が、最も苦手としていたのが魔法だった。
「そうね。普通科の中でも、特別優秀ではなかったかもしれない。だけど、そんなに悪くもなかったはずよ。真ん中くらいだったかな。だから、『苦手』っていうのは言い過ぎなんじゃないかしら……」
「家庭教師を雇ってその成績だったんだよ」
「えっ⁉︎」
ジェシカが驚くのも無理はない。
魔法に関して家庭教師を雇うなど、ハンスも聞いたことがなかったのだから。
魔法学校に入学して1年が経った頃、州知事が祖父の家を訪ねてきた。
校長である祖父の伝手を頼りに。
そうして、『娘ロザリアの家庭教師に最適な人物を紹介してほしい』とお願いしてきた。
州知事と州立魔法学校の校長という間柄。
州立魔法学校の校長を任命するのは州知事だ。
あくまで個人的な頼みということだったが、断れるはずもない。
祖父は、ヨルデン州立魔法学校とは完全に関係のない魔法教育者を紹介することにしたはずだ。
州知事が訪ねてきたことに驚き、不安を覚えた祖母に、その夜祖父はそう説明していた。
ハンスは意図せず、それを聞いてしまった。
そして、この件をきっかけに、ロザリア・ウィザースプーンという同級生の存在を知った。