せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
「だから、僕は最初から彼女にはいい印象をもってなくて」
「えっ⁉︎」
「どうして驚くんだい? 今までの話でいい印象をもてる要素はあった?」
「そうじゃなくて、学生時代のあなたって、人の好き嫌いをするイメージはなかったわ」
「人の好き嫌いはあったけど、わざわざ言わなかっただけだよ」
「私、あなたのこと、勝手に神格化して見てたのかも。でも、考えてみればそうよね。あなただって、普通の学生だったんだもの」
「幻滅した?」
「ううん、当たり前のことに今さら気がついたってだけよ」
ハンスはほっとした。
学業こそ神がかっていたかもしれないが、それを除けば普通の子どもだった、とハンス自身は思っている。
親元から離されたことで淋しい思いをし、祖父母にまで捨てられないように、と真面目に振る舞ってしまうような。
それでも、ひとりの女生徒に恋をするような──
ロザリアは、祖父の紹介した人物を家庭教師に迎えて、学校外でも魔法の勉強を始めた。
入学時に選抜科に入ることが叶わなかったが、おそらくは中等部から選抜科に移ることを目指していたのだろう。
魔法学校では、中等部に上がるタイミングで、選抜科と普通科の生徒が若干名入れ替えられる。
それは、本人の希望と初等部での成績を考慮しておこなわれる。
それ以降もロザリアの父親は、何度かハンスの祖父を訪ねてきた。
そしてその度に、『家庭教師を変更したい』、『別の教科を専門に教えられる家庭教師を増やしたい』と言っては、祖父を煩わせた。
いつまで経っても、彼女が満足のいく成績を取れる日はこなかった。