せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 この頃までには、ハンスとロザリアは学校で顔見知り程度にはなっていた。
 同時期にお互いクラス委員長に任命されたこともあり、委員会で顔を合わせた際には何度か言葉も交わしていた。

 しかし、ロザリアがハンスと婚約したがった理由には心当たりがなかった。
 ハンスに憧れているような素振りを見せたことはなかった。
 むしろバチバチに対抗意識を燃やし、張り合おうとしているようにすら感じていた。

(それが、突然なぜ?)

 もともとロザリアにいい印象をもっていなかったハンスは、真っ向から意見を申し立てた。

──僕は、友達に気を遣わせてしまうほうが嫌です。それに、もちろん学校内では、ロザリアさんともほかの同級生たちと同じように接するつもりですが、婚約のことを知られると、委員会等で婚約者だから贔屓をしていると見られてしまうかもしれません。

 ハンスが話している間、ロザリアは明らかに機嫌を悪くしていった。
 自分の意見を聞き入れてもらえないとは思ってもみなかったような態度だった。

──それとも、何か公表しなければならない事情でもあるのですか?

 ロザリアは怒りを湛えていたが、何も答えなかった。
 ハンスは淡々と告げた。

──特にないのであれば、公表するのは卒業後にしてください。

 ロザリアの膨れっ面を見て、ハンスはため息を吐きたくなった。

(僕はこんな子と婚約してしまったのか……)

 婚約したそばから、一刻も早い解消を心の中で祈った。

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