せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

22. 過去の計画

 新年度が始まり、中等部に上がった。
 祖母が制服を買い替えてくれたし、同じ敷地内とはいえ校舎は移るので、やはり気分は一新された。

 教室に向かうと、新たに中等部からクラスメイトとして加わった生徒を中心に盛り上がっていた。

(あのど真ん中にいるんだろうな……)

 気は重かったが、『学校ではほかの生徒と同じように接する』と予め宣言してあるのだ。
 気負わなくていい、と自分に言い聞かせ、『ふう』と息を吐いてから教室に入った。
 ところが、予想に反して、ロザリアは選抜科の教室にはいなかった。
 彼女は依然として、普通科に在籍したままだったのである。

 ああ、と直感的に思った。
 だから自分と婚約したがったのか、と。

 成績を上げることを諦めたのだ。
 その穴埋めに必要だったのがハンスというわけだ。

(僕の婚約者になったところで、僕の成績が彼女のものになったりはしないのに……)

 ともあれ、学校でロザリアと顔を合わせる機会が少ないままなことは幸いだった。

 が、ほっとしたのも束の間、月に一度の食事会が義務として課された。
 はじめは、そのくらいの頻度なら、と思って了承したはず。
 それが、すぐにうんざりする羽目に陥ってしまうとは。

 自慢話から学校の噂話に、クラスメイトに対する文句や侮蔑まで。

(毎回毎回ぼくは一体何を聞かされているのだろう⁇)

 中等部に上がり、友人らは段々と将来の計画を語るようになっていた。
 まだ夢物語の域を出ていなかったかもしれない。
 それでも、ハンスが影響を受けるには十分で、ハンスもまた自分の将来を悩み始めた。

(いつまでロザリアとの婚約は続くんだ? もしかして、このまま結婚して知事の工場に勤める、なんてこともありえてしまうのか? だけど、それは嫌だ。僕は魔法を生業にしたい!)
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