せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 同時に、反抗期といわれる時期にも入っていた。
 その家庭環境のせいか、表立って大人に反抗することはしなかったが、自立心は育っていて、祖父母の庇護を盲信的に求める状態からは脱していた。

(そうだ、ヨルデンにこだわらなければいいんだ。仕事に就ければ、ひとりで生きていくことだってできるんだ!)

 そう考えると、ロザリアとの婚約はメリットどころか、枷でしかなくなる。

 そんな折、たまたま図書館でジェシカに話しかける機会を得た。
 淡い初恋。
 けれど、ジェシカとどうこうなれるとは期待していなかった。

 それでも、ジェシカと過ごす時間が大切になればなるほど、自分がロザリアとの婚約に縛り付けられている気がして我慢ならなくなった。

(出よう、ヨルデン州を。そして、ロザリアや知事とはおさらばするんだ)

 幸いにも、成績を考えれば至極当然の決断。
 ヨルデンを出られるならどこでも構わなかったが、教師に勧められるままに、国立フィラストン魔法カレッジを志望することにした。

 首都フィラストンには、両親がいるという点も都合がよかった。
 そのお陰で、祖父母はすんなり賛成してくれた。
 説得のために身構えていたハンスは拍子抜けしてしまった。

 知事とロザリア親子は、ハンスが首都で学び、いずれはヨルデンに戻って錦を飾るつもりでいるのだろうと、勝手に勘違いしてくれた。
 特にロザリアは、ハンスが若いうちは首都で働いてくれるなら、結婚後しばらくは自分も首都で暮らせる、と都会の生活に夢を馳せていた。
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