せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 その後ジェシカと再会をし、ハンスは元々計画していた婚約解消に向けて動き出した──

 容易だろうと想像していた。
 何せ、ロザリアの要求を無視して、ノーステリアに移ったことを烈火のごとく怒っていたのだから。

 しかし、彼女はけんもほろろに拒否した。

(僕のことを好きでも何でもないのに、なぜなんだ……)

 魔法学校時代、ハンスとロザリアの婚約を伏せていたから、ハンスの友人の中にはロザリアに言い寄る野心家もいた。
 美人で、良家の令嬢。
 彼女を魅力的に思う者がいても何ら不思議ではない。

 婚約を解消すれば、すぐにでも求婚者は殺到するだろう。
 ロザリアは、自分の信奉者を新たな婚約者に据えるべきだ。
 そのほうが、彼女にとってもいいはずだ。
 ノーステリアの研究員であるハンスに拘る必要はない。

 しかし、自分が振られるなど、プライドが許さないのだろう。
 それゆえに、婚約解消には応じないとしか考えられない。

(それでは、誰もしあわせにならないというのに……)

「やっぱりこういうのは祖父に頼まず、当事者が話すべきだと思う。まとめて休暇を取って、ヨルデンに行ってくるよ」
「私にできることは?」
「先に仕事を片付けてしまってからでないと休めないから、しばらく忙しくするかも。家事を手伝ってくれると助かる」
「分かったわ。でも、無理はしないで」
「でも、1日も早くセシルの父親だと正々堂々名乗れるようにがんばりたいんだ」

 またセシルをイジメる生徒が現れる前でなくてはならない。
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