せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

24. 仕事

「第七班の皆さーん、一旦作業を止めて、こっちに注目してくださーい」

 勤務時間中にも拘らず、班長が大きな声を上げる。
 清浄水を作る手を止めて顔を上げると、班長の隣には工場長が立っていた。
 工場長は第七班の作業風景を見渡して独りごちる。

「第七班にも活気がでてきたな」

 工場長は素直に驚いているようだった。
 ほかの班ならまだしも、第七班の作業場所まで自ら足を運ぶことは珍しい。
 だから、現況を知らなかったのだろう。

 魔法の糸を製作するようになってから、第七班にも自信が芽生え、日を追う毎に表情は明るくなっている。
 売れ行きが好調のようだと、日々肌で感じられることが大きい。

 たとえば、従業員たちは仕事終わりや休日に街へ出る。
 その際に、魔法の糸を取り扱っている商店の前も通る。
 そうすると毎回のように、買い求める客の姿が自然と目に入るのだ。

 また、知り合いから実際に購入し使った感想を聞く者も少なくなかった。
 決まってどれほど有用であったかを熱く語られる。

 これほど自分の仕事を誇りに思える出来事があるだろうか。
 今や第七班の仕事に対するモチベーションは、かつてないほど高まっていた。
 今は従来からの商品である清浄水を作っている最中だったが、皆の表情は活き活きとしている。

 第七班全員が作業を休止し、工場長に注目する。
 工場長直々に話があるなど、異例のことだ。
 しかも、工場長の醸す雰囲気から悪い内容でないことを察することができる。

(何の話だろう?)

 皆が期待している空気の中で、工場長はにっこり笑顔になって言った。
 
「第七班の先週の売り上げが、先々週から5割アップしました」
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