せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 歓声が上がる。

「わあ!」
「やったあ」
「ジェシカ、すごいわ!」

 マーサとリアナはジェシカに駆け寄り、抱きつく。

「次の賞与は期待してくれていいですよ。今後もこの数字が続くようなら、基本給も上げられるでしょう。ですから、気を抜くことなく、この調子で仕事に励んで生産数を維持してください。以上!」

 興奮冷めやらぬ中、『ウォルコットさん』と工場長に手招きされる。
 マーサとリアナが腕の力を緩めたので、その腕を丁寧にはずし、工場長の元へ向かう。

「何でしょうか?」
「単刀直入に言うと、君に新たな商品の開発をお願いしたいと思ってね」

 聞き耳を立てていたマーサとリアナは、目を見開く。

「これまで商品開発は男性従業員主導でおこなわれてきたが、母親目線のアイデアに大きな可能性があることが分かった。こういう商品をもっと増やしていきたい。もちろん勤務時間中で構わないから、その辺りは班長と相談してみてほしい」
「は、はい……」

 マーサとリアナは興奮した様子で、ジェシカに熱視線を送ってきた。
 気が早いが、新たなヒット商品を製作する第七班を想像できているらしい。

 それとは対照的に、ジェシカは怖くなってしまった。

(あれはハンスの魔法を実用化しただけなのに! 私に商品開発なんてできっこない‼︎)

 ジェシカは頭を抱えながら、この日の勤務を終えた──

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