せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
班長は気遣いの人だ。
ジェシカが仕事を始めた頃からそうだ。
職場に入ってきても、足手纏いにしかならない新人。
しかも労働経験はなく、出産していくばくも経っていなかったのだから尚更だったはず。
それでも温かく迎え入れ、一から仕事を教え育ててくれた恩人でもある。
班長と話し合った結果というか、班長の提案そのまま了承しただけなのだけれど、ジェシカは清浄水の生産から外れ、その時間を商品開発に充てることとなった。
糸の製作については、何の心配もないほど第七班の全員が習得していたが、万一のために継続する。
「でも、それだと清浄水の生産数を維持できなくなりませんか?」
「皆が糸の製作に慣れてきて、そっちのほうの生産性は日々上がってるから、たぶん問題ないよ。作業時間の配分を調整して、清浄水の製造時間を長くすることで、ウォルコットさんが抜ける穴を埋めようと考えてる。もしそれでも間に合わないときには、少しだけ手伝いをお願いするかもしれないけど」
「はい、そのときはいつでも言ってください」
ジェシカとしては何の不満もないどころか、申し訳なくなるような高待遇だと思った。
班長も表には出さないだけで、内心ではジェシカの開発に期待してくれているのかもしれない。
(がんばらなくちゃね)