せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

「被害者ぶらないでよ! 被害者はこっちよ⁉︎」

 ジェシカははっと息を飲んだ。
 あのロザリアが泣きはじめたからだ。
 誰よりもプライドが高く、魔法学校では王族のように振る舞っていた彼女が、だ。

「私はずっとハンスが好きだったの! 入学式ではじめて会ったときからよ? ハンスに釣り合うために努力だってして……自分のもつ唯一の手札だって使って……」

 それは、ロザリア側の物語。

(家庭教師を探してまで魔法の成績を上げたかったのは、ハンスに釣り合いたかったからなのね……)

 それが叶わなくて、自力で振り向かせることを諦めたのだろう。
 それで父親に頼んでハンスと婚約することにした──

 ハンスから聞いていた話とは大きく乖離していた。

「ハンスに釣り合う人が相手なら、私だって理解できたわ。だけど、あなただなんて、絶対に納得できない! しかもカレッジ入学早々に失踪したって噂になってたけれど、まさか妊娠していただなんて」

 カレッジ内で噂になっていたという事実をはじめて知り、ショックを受ける。
 ロザリアは、まるで汚物でも見るような視線を向けてきた。

 ロザリアとは同じ州立魔法カレッジに進学したことは知っていたものの、専門分野は異なったため、カレッジでは1度も顔を合わせていなかった。
 それほど関係の薄いロザリアにまで噂が届いたということは、自分の失踪はどれほどスキャンダラスな話題として扱われてしまったのだろうか。
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