せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

「あなたの失踪後、ハンスの周辺に現れるんじゃないかってずっと用心していたわ。ようやく安心して、あなたのことも思い出さなくなってたっていうのに、どういうつもりなの? ハンスから『ノーステリアに異動するかも』と聞いたときから、嫌な気がしてたのよ。まさか、あなたのためだっただなんて!」
「ち、違っ……」
「魔法学校時代から付き纏っていたんでしょう⁉︎ だから、卒業パーティーでおかしな話が出たんだわ!」
「っ‼︎ 付き纏ってだなんて、そんな……」

 しかし、ここでジェシカ側の物語を話して聞かせたところで何になるというのか。
 ジェシカのしたことを正当化したいわけではないし、できるとも思っていない。

 誤解を解いて、ハンスとジェシカが心から想い合っていることを理解できれば納得できる、というものでもないはずだ。
 ロザリアは十分傷ついている。
 さらに塩を塗りこむことは、むしろするべきではない。

「……ごめんなさい」

 ジェシカは深々と頭を下げた。

「それだけで済むはずがないでしょう⁉︎」
「……なら、どうすれば?」

 怒りに油を注ぐだけなのは予想できていた。
 けれど、話を終わらせるには、ロザリアに問う以外に方法は思い付かなかったのだ。
 これ以上はセシルに聞かせたくない。
 セシルの震えが、さっきから腕を通して伝わってきていた。
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