せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
マシューから解放されたいのと、腕が重さに耐えきれなくなりそうなのとで、ジェシカは早足で歩いた。
倉庫の前に到着すると、庇の影になっているところに慎重に木箱を下ろした。
「それじゃ」
「あっ……」
マシューは話し足りなさそうだったが、ジェシカは、倉庫の入口を入ってすぐのところに山積みになっている新聞紙とハギレを取りに行く。
これから商品が割れないように、梱包作業をするのだ。
出荷できる状態にし、倉庫内の所定の場所に積むところまでが第七班の仕事なのである。
マシューはしばらく所在なさげに立っていたが、ようやく諦めてくれたようで、倉庫の中にいる別の従業員に声をかける。
「梱包よろしく」
第二班の製品は、贅沢にビロードで包まれ、丁寧に箱の中に納められる。
さらには、開封されるまでに損傷しないように防護魔法までかけられるのだ。
(何から何まで大違いね)
ジェシカは地べたに座り、ハギレで瓶を磨き、新聞紙で包んでいく。
無駄なく手を動かす。
早く梱包作業が終わらせ、作業机に戻らなければならない。
次の空き瓶が待機しているんだ。
簡単な作業内容のはずなのに、魔法を使うことで精神が擦り減る、肉体労働をすることで体力が削られる。
こうして、毎日就業時間の終わりにはクタクタになってしまうのだった。
ジェシカは大きくため息を吐いた
さらにもうひとつ、今日はやらなければならないことがある。
そのことがジェシカの心を重くしていた──