せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 休み時間になると、マーサとリアナが声をかけてきた。

「今朝の話の続きだけど、セシルくん、よかったわねえ」
「ほんとに。おめでとう」
「ありがとう」
「それで、入学式はいつなの?」

 いつもならここで3人一緒になって、ひと息つくところである。
 しかし、今日に限っては行かなければならない場所がある。

「話はあとでまた聞いてくれる? 今から工場長のところに行ってくるから」

 マーサとリアナは、それだけで何となく察してくれたようだった。

「がんばって」
「検討を祈ってる」

 気持ちは重いが、休み時間は短い。
 そして、行かないという選択肢もまた、ありはしないのだ。
 ジェシカは工場長室へと急いだ。

 重厚な木製のドアをノックをする。
 最も緊張した瞬間だった。

「第七班のジェシカ・ウォルコットです」

 工場長は『第七班』と聞いただけで、あからさまに興味のなさそうな態度を取る。

「用件は?」
「給与の前借りを、」

 工場長はジェシカの耳に届くように、大仰なため息を吐く。

(断られたらマズいわ‼︎)

 ジェシカは慌てた。
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