せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
しかし、そんなジェシカに、ロザリアは冷たく言い放つ。
「なら、あなたが身を引きなさいよ。今すぐ荷物をまとめてヨルデンに帰って。ご両親だって、職を失って路頭に迷うより、娘が戻ってきて元通りの暮らせるほうがずっと幸せでしょう? ああ、元通りではないわね。孫まで増えて最高じゃない」
ロザリアは腕に提げていたハンドバッグから小切手帳を取り出した。
「ヨルデンまでの切符代が要るでしょう?」
さらさらっと数字とサインを書き込む。
しかし、やけに数字が多い気がする……
「それと、ヨルデンに着いたらすぐに家族で転居してちょうだい。あなたのお父様のことも、配置転換して勤務する工場だけは変えてもらえるように父に頼むわ。失業するよりはずっといいでしょう?」
突き出された小切手を、感覚のない手で受け取った。
頬を二度も叩かれて、全身が麻痺してしまったのかもしれない。
「早急にね。ハンスに居場所を見つかるようなことがあれば、やっぱりあなたのお父様を解雇してもらわないといけなくなるから」