せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 ジェシカはセシルとともに乗合馬車に乗り、銀行ではなく、ノーステリア中央駅へと向かった。
 運賃は工場の給金から出した。
 小っぽけな意地のようなものだ。
 ロザリアの小切手は、いずれは換金して使わなければならなくなるのは分かっていたが、哀しさで身が千切れそうな今は、自分を守るためにどうしても使いたくなかった。

 駅の窓口は夕方ということもあり混雑していたが、ヨルデンにも途中停車する特急列車は空席がたくさんあるようで、窓際とその隣の席を取れた。

(セシルを窓際に座らせてあげよう)

 突然追い出され、知らない土地に行くのだ。
 さっきからもうずっと黙ったままだ。
 それほどショックが大きいことの表れに違いない。
 胸中は恐怖と不安で、さぞいっぱいだろう。
 綺麗な景色を見せて、少しでも落ち着かせてあげられたら、と願う。

(ヨルデンの実家に着いたら、セシルの学校のことも考えてあげないと……)

 そうして、セシルにもきちんと説明をしよう。
 今までのこととこれからのことを。

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