せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 ジェシカはようやく会話ができるまで泣き止んだ。

「ところで、どうして私たちがここにいることが分かったの?」
「帰宅してみれば、ロザリアがいて驚いたよ。君らを『追い出した』と言うし」
「でも、あの列車に乗ることはロザリアさんだって知らないはず……」

 ハンスがすっと手を上げ、呪文を唱える。
 すると、ハンスの手首とジェシカの手首とを繋ぐ線が現れた。

「えっ、でも、この魔法は解除したはずでしょう⁉︎」
「実はしてなかった。見えなくしただけ」
「これは『ストーカー行為』だと言ったはずよ?」
「君の過去の失踪は、僕にとってそれほどのトラウマになってたんだ。第一、君にそれを言う資格はあるのかい? 現に、君はまた僕の前から姿を消そうとしたじゃないか。この魔法は解除しなくて正解だったよ」

 ぐうの音も出ない。

「何があろうとこの魔法は解除しないから、そのつもりでいて。僕の前から姿を消すことは二度とできないよ」

 ハンスがジェシカとセシルをまとめてハグする。

「でも、それだと……えっ⁉︎」

 ジェシカはその肩越しの懐かしい顔を見つけた──

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