せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
セシルの入学支度金を確保できた。
そのことには安堵する。
しかし、ジェシカの心はひどく傷ついた。
工場長の悪意に満ちた発言が反芻される。
過去を後悔したくはない。
そのはずが、あのとき両親の言う通りにしていればこんなふうに蔑まれることはなかったのに、という考えが頭をよぎってしまう。
(あー、ダメダメ! 私はセシルとふたりでしあわせなんだから)
そうなのだ。
セシルといれば、貧しくともしあわせなのだ。
それなのに、第三者がしあわせではないと思い込ませようとする。
(いっそのこと、私とセシルしかいない世界に閉じ籠れたらいいのに……)
そんなことを考えるほど沈んでしまったジェシカを掬い上げたのはマーサとリアナだった。
「あっ、おかえりなさい」
「どうだった?」
「うん。『セシルの入学支度金を前借りさせてほしい』ってお願いしてきたんだけど、まあ、何とか無事に」
喜ばしい報告にも拘らず、ジェシカがヘラッと弱々しく笑うので、マーサもリアナも何があったのか想像できた。