せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

「どうせ嫌味を言われたんでしょう? 工場長は末娘が魔法学校に受からなかったそうだから」
「えっ、そうだったの⁉︎」
「工場長、面白くなかっただろうね。それなのにお願いできて、よくがんばったじゃない」

 創業者でもある先代の工場長は、優れた魔術士だった。
 しかし、そのひとり息子でもある現・工場長は、魔法を使えない。
 工場長がそのことにコンプレックスを抱いていることは、従業員なら誰もが知っていた。

「ようやく魔法の素質がある子ができたって喜んでたのに、気の毒ではあるわ」
「だからって、工場長ともあろう人が八つ当たりするのはどうかと思うけど?」
「確かに。そこで『おめでとう』って気前よく前借りさせてくれれば、こっちは感謝感激ものなのにねえ」
「悪い人ではないんだけど器が小さいから、そんなのムリよ、ムリ」

 ジェシカの心のモヤは晴れてしまう。
 それどころか可哀想な気がしてくるから不思議だ。

 個人の事情は異なれど、似たような境遇の者たちが集まった第七班。
 歳の近い同僚という枠を超え、励まし合って、慰め合ってきた同士でもあるのだ。
 今日もふたりに救われたジェシカだった。

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