せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
かなり時間を潰せたと思っていたものの、図書館の正面に到着してみると、入口はまだ開いていなかった。
「この辺をお散歩でもしてみる?」
「ううん、開いたらすぐに入りたいから、ここで待ってる」
「そう。わかったわ」
しかし、じきに開くはずだ。
それもいいだろう。
セシルはガラス越しに図書館の中を覗き、開館準備がおこなわれている様子を観察し始めた。
早く開けてほしくて仕方がない、といった表情をしている。
ジェシカは、何となしに図書館のファサードを見渡した。
福祉のノーステリアが誇る州立図書館。
天井まで20メートルはある重量感のある石造りの建物に、書籍がぎっしりと詰まっている。
蔵書数は、国立図書館を除けば、国内でも1、2位を争う。
もちろん魔法に関する書籍も豊富に揃っている。
ジェシカは図書館が好きだ。
それはここに限ったことではなく、図書館であればどこでもそうだ。
魔法学校時代は、学校の図書館に足しげく通ったものだ。
そこは教室棟や実習棟とは別の独立した建物だった。
こじんまりとした木造で、雨になると独特の匂いがした。
あの空間で読書したり勉強した時間は、大切な思い出だ──
とそのとき、正面脇に掲示されているポスターに視線が吸い寄せられた。
本日、大セミナー室で講演会があるようだ。
タイトルは、『魔道具発展の歴史と市民生活の発展』。
ジェシカが製作しているのは魔道具ではないが、魔道具工場に勤務している身としては、とても興味をそそられるタイトルである。
(ええっと、講演者は……)