せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

6. バースデー

「お誕生日おめでとう!」

 セシルは誕生日を迎え、6歳になった。
 朝一番にハグをしながら言ったけれど、改めてもう一度言葉にする。

 いつも通りの固いパンとスープの夕食。
 それでも、スープにベーコンをプラスしただけ、いつもよりはほんの少し豪華なのである。

 例年ならこれでお終いだ。
 しかし、今年は違う。
 プレゼントを用意した。
 といっても、ローブに、制服に、鞄に、筆記具……
 入学を控えている魔法学校で使うための学用品ばかりであるが。

 にも拘らず、セシルは『わあ!』と、大きな笑顔を見せてくれた。

「僕、魔法の勉強がんばるね」

 それもこれも工場長のお陰だ。
 前借りさせてくれた給与を使って準備ができた。
 後日教科書を一式揃えなければならないが、そっちのほうも問題なく購入できそうだ。

 工場長はやはり小者ではあっても、悪い人ではないのだと思う。
 あのときは哀しかった嫌味も、今ではどうでもいいと感じる。
 セシルをとびきりの笑顔にすることができたのだから。
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