せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 それらと比べると、ジェシカがセシルに用意したものはずいぶん見劣りしてしまう。
 実際、出費を最小限におさえたのだから、それも仕方がない。

 成長に伴い数年で買い替えないといけなくなるローブと制服は中古品だ。
 それでも欲が出てしまい、やや大き過ぎるサイズを購入してしまった。
 裾だけは詰めてあげられるが、肩やウエストはぶかぶかで、体が大きくなるまでは動きづらいかもしれない。

 鞄は長く使うものだから、と新品にしたが、それでも店で1番安い商品を選ぶほかなかった。
 機能性には不安を感じたが、目を瞑った。

 筆記具もそう。
 粗悪品で、文字を書きにくい。

 自分が両親に与えてもらえてもらったのと同等の品を用意してあげることはできない。
 セシルに対して申し訳なく思う。

 それと同時にそれだけのことをしてくれた両親の愛情を今さらながら痛感する。
 娘が将来生活に困ることがないように、教育の機会とそれに相応しい支援を惜しみなく与えてくれた。

 魔法学校はあくまで最初のステップで、卒業後はさらに魔法カレッジに進学して、将来は魔法で身を立てる──
 そんな娘の未来を信じてくれていたはずだ。

 しかし、実際はどうだ。
 現在、一応魔法を使った仕事をしてはいるが、金銭的な余裕は全くない。
 こうした大きなイベントに臨むには、給与を前借りしなければならないほどに。

 そして、両親に恩を返せないどころか、音信不通の状態にいる。
 何よりもこのことを情けなく、哀しく思った──

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