せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

7. 入学式前

「似合ってるわ!」

 ジェシカは、『うん、うん』と頷きながら、制服とローブに身を包んだセシルをためつすがめつしている。
 いつまでだって眺めていられる自信がある。

 制服とローブは、魔法を使って綺麗に洗った。
 完璧にシミ抜きをし、繊維が潰れてテカテカになっている箇所も直した。
 シワだってひとつもない。
 がんばった甲斐があり、よほど目を凝らさなければ、新品と間違えてもおかしくない状態にまでなった。
 中級程度までの魔法とはいえ、自由に使えることのメリットを実感する。

 心配していたオーバーサイズのほうは、裾を詰めただけでも、想像以上にマシに見えるようになった。
 第一、ほかの新入生だって、セシルほどではないにしろ大きめのサイズを着てくるに違いないのだ。
 それこそ、いかにも新入生らしく。
 その集団に紛れてしまえば、意外と気にならないかもしれない。

 肩の位置が合わなくて腕を動かしにくいことを心配していたが、古着なことがかえってよかった。
 着古されて生地が柔らかくなっていた。

「ねえ、ママはまだ着替えないの? 入学式に遅れたら嫌だよ」
「そうね。今から着替えるわ」

 入学式にはまだ十分時間があるが、楽しみで待ちきれない気持ちなのだろう。

(大きくなったと思ったけど、やっぱりまだまだ子どもね)
< 36 / 161 >

この作品をシェア

pagetop