せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
通学ルートを確認しながら歩く。
魔法学校のほうが、幼児保育所よりも家からずいぶんと遠い。
朝のスケジュールを大幅に変えなくてはいけなくなる。
自分はいいが、セシルの負担が大きくなってしまうことは気がかりだ。
天候の悪い日は特に大変だろう。
そして、登校以上に心配なのは下校だ。
人通りが多く、シンプルな道順を教える。
慎重に考え選んだ通学ルートだったはずだが、実際にこうしてセシルと歩いてみると心配になってくる。
「いい? これからは毎日ひとりで帰ってこないといけないの。なるべく大通りを歩いて帰ってきてね」
(本当は、学校の近くに引っ越せたらいいんだけど……)
今の下宿と同じ家賃では到底探せない。
魔法学校の周辺は環境がよく、人気のエリアなのだ。
(セシルが小学生になることだし、工場長に勤務時間の延長をお願いしてみる? だけど、初等部は授業が早く終わってしまうのよね。ひとりで長くお留守番させるのは可哀想だし……)
通学の利便性と母子の時間。
どちらを取るべきか。
ジェシカが考えこんでいるのとは対照的に、セシルの表情は明るい。
「友達、いっぱいできるかな?」
「入学式ってどんなことやるの?」
「学校の先生は、保育所の先生より怖い?」
質問が次々に投げられる。
自分が過ごした魔法学校での生活を思い出しながら、ひとつずつ丁寧に答える。