せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 そうしているうちに、ずっと閉じていたままにしていた記憶の蓋までが開く。
 その開口は最初は小さかったが、話しているうちに徐々に大きくなる。

 入学式の日、緊張しながらくぐった正門。
 実際よりも大きく感じた。
 式はカチカチになって座っていたら、よく分からないうちに終了していた。
 最初に話しかけてくれたリズ。
 すぐに仲よくなれた。
 担任のハーマン先生は声が大きくて、始め厳しそうに見えたけれど、実際にはお茶目で優しかった──

 魔法学校に到着する頃には、すっかり記憶に浸っていた。

 ジェシカの通っていた魔法学校とは違う学校。
 にも拘らず、

(懐かしい)

 そう感じた。
 学校全体が醸す雰囲気が同じなのだ。

「ママ?」
「うん?」

 過去へと飛んでいた意識が、現実に戻る。
 見ると、セシルが不安そうな顔になっている。

「どうしたの?」
「僕、ここでママとお別れ?」

 セシルの視線の先では、受付を済ませた子どもと保護者が、手を振り合って別々の方向へ移動している。

「そうみたいね。でも、安心して。入学式がおこなわれる講堂にママもいるわ。セシルのこと、見守ってる。終わったら、今日は一緒に帰ろうね」

 そこまで言うと、セシルの表情は柔らかくなる。

 ジェシカたちも受付に並んだ。
 順番が来てセシルの名前を告げると、クラスは『A組』だと教えられる。

「セシルさんはこれからA組の教室に行ってください」
「ここからは先生の言うことをよく聞いてね」
「うん。じゃあ、ママ、あとでね」

 まだ少しだけ不安そうだけれど、大丈夫だろう。
 誘導係の上級生もいる。

「保護者のかたはこちらへお願いしまーす」

 ジェシカもまた案内に従って歩いた。

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