せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
まだ保護者しかいない講堂。
しかし、これから始まる入学式が楽しみな空気がすでに充満している。
ジェシカは保護者の中でひときわ若いが、クラシックなワンピースを着ているお陰で目立たずに済んでいる。
それよりも、夫婦で来場している保護者ばかりの中、ひとりで来校していることのほうに肩身の狭さを感じた。
セシルと一緒だったときには平気だったのに、ひとりになると急にそのことが気になり始めたのだった。
(私、セシルを拠り所にしていたんだわ。学校に入って、あの子も少しずつ手を離れていくでしょうから、子離れしていかないと……)
挨拶し合っている保護者たちの声がそこここから聞こえてくる。
この学校の卒業生が多いようだ。
中には久々の再会に驚き、喜んでいる者たちもいる。
やはりまたもや孤独を感じ、淋しくなってしまう。
(セシルが私の母校に入学してたら……)
保護者の中に見知った顔があっただろうか。
もしかしたら、ジェシカが教わった先生もまだ残っているかもしれない。
(さすがに校長先生は退職してるでしょうけど)
年齢からいえば、ハーマン先生やムーンウェイン先生は、まだ在籍していても不思議ではない。
セシルが彼女たちから授業を受ける姿が思い浮かんだ。
けれど、それをすぐに打ち消す。
セシルは、ここノーステリア州立魔法学校で学ぶことを楽しみにしているのだ。
第一、田舎のヨルデン州立魔法学校によりもここのほうが、教師陣の層が厚いし、設備も備品も整っている。
より質の高い授業を受けられるだろう。
だから、セシルが自分の母校に入学していたら、などと想像する必要はないはずだ。
(今日はやたらと昔のことを思い出すせいで、感傷的になってしまってるのかも??)