せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
きっとそうだ。
セシルをヨルデンの魔法学校に通わせたいわけではない。
ジェシカ自身がもう一度あそこへ戻りたいのだ。
間違えてはいけない。
気を取り直す。
比較的静かな一画に空いている席を見つけた。
(セシルの入場を見逃さないようにしないとね。あの子、きっと張り切って入ってくるもの)
静かに座って開式を待つ。
と、教員が一列になって講堂に入場してきた。
彼らは講堂の脇に用意された席に着く。
同時に、保護者席のさざめきが止む。
まだ立っていた保護者たちも速やかに着席した。
ジェシカの位置から教員席までは距離があるが、教員席に羨望の眼差しを向ける。
かつて教師になりたいと願っていた。
ジェシカの諦めた夢を叶えた者たちは、ジェシカの目には眩しく映る。
(私、魔法理論の教師になりたかったのよね)
どの先生が魔法理論の教員だろうか。
(あの先生は、いかにも古典魔法学っぽいわ。隣の先生は魔法実践学?)
視線を、前方から後方へと順々に移していく。
かつての恩師たちの雰囲気と照らし合わせて推理していく。
何だか楽しくなってきた。
ところが、ジェシカはある席にたどり着いた瞬間、パッと俯いた。
その席に座る教員と視線が交わったからだ。
しかも、その教員の顔には見覚えがあった。
(嘘⁉︎)
冷や汗が噴き出る。
(そんな、あり得ない! 見間違いよね⁉︎)
あり得ない、見間違いだと思うなら、もう1度顔を上げて確認すればいいだけのこと。
しかし、どうしてもそれをする勇気が出ないのであった。