せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
「これより入学式を開式いたします。新入生が入場しますので、拍手でお迎えください」
先ほどから感じていたはずの視線も消えた。
(顔を上げないと。セシルはA組だから、すぐに入ってくるはず)
これだけ保護者がいるのだ。
セシルはジェシカのことを見つけられないだろう。
けれど、ジェシカはセシルを見つけ、拍手を送ってやりたい。
マーサとリアナも、そのためにジェシカを入学式に送り出してくれたのだ。
(あっ、来たわ!)
誕生日が遅めのセシルは、ほかの新入生よりも比較的体が小さい。
けれど、胸を張って堂々と入場するその姿はとても立派だ。
(あの人も教員席から見ているのかしら……)
手を叩きながら、まだあの教員のことが気になった。
彼ではないと頭の中で必死に否定していたはずなのに、半分くらいは彼なのかもしれないと思うようになっていた。
(もしそうだったとして、問題になるのは何?)
また食事に誘われること。
それから、ジェシカに息子がいるのを知られること。
このふたつだろうか。
(だったら、彼が今ここにいても構わないんじゃない??)
食事は固辞し続ければいいだけの話だ。
セシルのほうにしたって、視界に入ったところで、セシルが何者かまでは分かりようがない。
たくさんいる新入生のうちの1人としか認識できやしないのだ。