せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

「……連絡事項は以上となります。保護者の皆さんは、お子さんを迎えに行ってあげてください。明日から元気に登校してきてくれることを期待しています」

 ジェシカは周りに合わせて席を立った。
 そうして、ゆっくりとした足取りで出口を目指す保護者たちの流れに紛れ込んだ。
 あえて、ひときわ保護者が密集して混雑している辺りを選びながら、慎重に歩く。

 教室の前までたどり着くと、廊下はちょっとしたカオスになった。
 狭い廊下は保護者たちでぎゅうぎゅうだ。
 皆、我が子を探そうと背伸びをする。
 しかし、ジェシカに至っては、保護者の背中しか見えない状況だ。
 保護者と子ども、両方の声が飛び交う。

 そんな中、『パパ!』という声がして、ジェシカの傍にいた男性の元に女の子が飛び込んだ。

「あっ、ママもいた!」
「さあ、帰ろうか」
「混み合ってるから、早くここを抜けましょう」

 ようやく隙間から教室の中を覗けるようになった。
 しかし、まだ大半の保護者と子どもが残っていて、セシルを見つけられない。

(セシルはどこ?)

 その後も、子どものほうからお父さんを見つけるパターンが続いた。
 やはり背が高いと見つけやすいのだろう。

 無事に会えた親子が笑顔で目の前を通過していく。
 徐々にだが、確実にひと気は少なくなっていく。

(人混みに紛れて帰りたいのに!)

 焦りが募る。

(いた‼︎)

 講堂ではあれほど堂々としていたセシルだったが、少し不安げにしている。

「セシル」

 ジェシカは小さく名前を呼び、胸の前で控えめに手を振る。

「ママ!」

 表情がぱあっと明るくなり、駆け寄ってきた。

「すぐに見つけてあげられなくてごめんね」

 軽くハグをする。

「さあ、帰りましょう」
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