せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 ハンスは学校を出て、商店の並ぶ通りにやってきた。
 普段ならこの時間帯は仕事をしていて、買い物に来ることはまずない。
 いつもと違い、どの店も空いている。
 商品を見比べることができるのはとてもいい。

 あれから7年経つ。
 あのとき、ジェシカは確かに自分を好きだったはずだが、今もそうだとは思っていない。

 身上調査書によると、ジェシカに現在交際している男性はいない。
 工場で働いているとき以外は、常にセシルと一緒にいるようだ。
 ここからは想像だが、セシルのことだけを考え、セシルのためだけに生きているのだろう。

(なら、攻略するべきはセシルだ。あのくらいの年齢の男の子なら、やはり肉だろうか)

 子どもでも食べやすそうな、筋が少なく柔らかそうな肉を選ぶ。

 彼に、自分といることのメリットを教え込もう。
 お腹いっぱい食べられて、大好きな魔法にも触れ放題。
 さらに、母親も楽ができる──

 そんな環境を差し出されたら、小さな子どもは飛びつくはずだ。
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