せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 ハンスは、首都フィラストンで魔法省の官僚をしている両親から生まれた。
 まだハンスが幼かったうちは、母親は仕事をセーブし、子育てもしていた。
 が、ハンスが魔法学校を受験できる年齢に達すると、ヨルデン州にいる父方の祖父母の元にハンスを預け、また仕事漬けの生活に戻っていった。
 それ以来、誰かに言われたわけでもないのに、自分は両親に捨てられたのだという思いを抱き続けてきた。

 ハンスには、祖父が校長を務める魔法学校へ入学する以外の選択肢は与えられなかった。
 コネを使わない入学試験を受けての正規ルートではあったが、ハンスに不合格となる可能性など万にひとつもなく、すんなりと入学が決まった。
 当然ながら、各学年に1クラスだけ設けられた選抜科に。

 祖父は優しかったが、家にいるときも一線を引かれていたように思う。
 校長と生徒の関係が完全に崩れることはなかった。
 祖母からも、祖父の体面を傷つけることがないようにと躾けられた。

 祖父母からも捨てられたら、自分にはもう行き先がないという気持ちが常にあった。
 それは一種の強迫観念。

 だから、学校でも家でも優等生らしく振る舞った。
 勉強についてはそれほど嫌いではなかったし、楽々学年トップの成績を収められたのでよかった。 
 それよりも、自分の気持ちを隠して、祖父母や教師たちの望む通りに振る舞うことのほうがツラかった。
 ハンスとて、ただの子どもだったのだ。
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