せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 家でも学校でも気を張っていたハンスが唯一気を抜けた場所──
 それが学校の図書館だった。

 こじんまりとしていたが蔵書が揃っていて、今振り返ってみても、学校の施設としてはなかなかのものだったと思う。
 祖父も『ヨルデン州立魔法学校内で最も誇れる場所』だと称していた。

 初等部までは、授業と昼休みしか利用が許されていなかったが、中等部に上がって以降は放課後に入り浸ることだってできた。
 にも拘らず、授業以外で利用しようという生徒が少なかったのは、教室棟から離れていたせいだろう。

 放課後わざわざそこまで足を運ぶ生徒たちは、静かに過ごすことを好む傾向にあった。
 本を読むために来ているのだから当然といえば当然なのだが、本に夢中で、ほかの生徒に対して興味が薄い者も多かったように思う。
 なんにせよ、校長の孫であり、どの教師からも一目置かれているハンスとも、無理に仲よくなろうとしないで、ほどよい距離感を保ってくれるのが有り難かった。

 居心地がよかった。
 それと、教科書に沿って進む簡単で単調な授業とは違い、自由に本を選んで知識を吸収するのは純粋に楽しかった。
 毎日は無理だったが、可能な限りは放課後を図書館で過ごすようになった。
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