せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
「どれでも好きに読んでいいから。もし高いところにある本が読みたいときには、自分で取ろうとしないで呼んでくれたらいいよ」
児童向けの魔法書は下段にしまっておいたが、念の為だ。
ところが、セシルは得意げに言う。
「大丈夫です!」
そうして、呪文を唱える。
最上段から1冊の本が取り出され、しばらくの間、宙を浮く。
そうして、また元の位置に収まった。
ハンスはジェシカのほうを振り向いた。
「今のは5年生くらいで習う魔法だよね?」
「……そうだったかしら?」
ジェシカの顔は引き攣っている。
が、ハンスのほうは笑みが溢れてくる。
(やはりこの子は僕の子だ! 僕の子以外ありえない‼︎)
「なら、お母さんと僕は食事に戻るけど、ほかに困ったことがあったら呼ぶんだよ」
「はい、ありがとうございます」
セシルが早足で本棚の前まで行くのを見届けてから、ジェシカに微笑みかける。
「戻ろうか」