せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
ダイニングに戻ってきてからというもの、ジェシカが最後の審判でも待つかのような表情をしている。
(これ以上、緊張を強いるのも酷だろう)
本題を切り出していい頃合いだと判断する。
単刀直入に訊ねる。
「僕の子なんだろう?」
「……私の子よ」
「僕と君の子だよね?」
「あの子に父親はいないわ」
そう言われてしまうのも当然だ。
父親として何ひとつしてきていないのだから。
でも、これから先もこのままでいるつもりはない。
正直なところ、親子の情のような気持ちはまだ湧いてこない。
けれど、自分とジェシカの子であることは確信している。
「なら、訊き方を変えるよ。セシルくんの生物学上の父親は?」
返事はない。
「セシルくんの年齢から逆算すると、妊娠したのは魔法学校の卒業式頃だろう?」
なおも続く無言。
ジェシカは推し黙ってしまっている。
「僕しかいないじゃないか」
「それでも、セシルは私だけの子よ」
(強情だな。処女懐胎だとでも言い張る気か? 聖母じゃあるまいし……)
ため息を吐きそうになるのを、ぐっと飲み込んだ。
強い口調にならないように配慮する。
「僕には心当たりがある。それと、君が同時期に僕以外とそういう関係をもつような人だとは考えにくい。もう認めてくれないかい?」
ジェシカの瞳が揺らいだと思ったら、唇をキツく結んだ。
まるで泣くのを我慢している子どもみたいだ。