せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

「誓って、君以外にこんな魔法の使い方はしたことはないよ」
「確かに私も逃げたりして悪かったけど……」
「だろう?」
「でも、ダメなものはダメ! この魔法は解除して」
「……分かったよ」

 ふたりを結ぶ糸は空気に溶けるかのように、すーっと消える。

 何もなくなった空間を見ながら、ハンスは訊ねる。

「これでいい?」
「まだよ。もう二度とこの魔法は使わないって約束してくれたらいいわ」
「約束する」
「本当によ? 私にだけじゃない、セシルにもね?
「誓うよ」
「あら? でも……」

 ジェシカがふと考え込む。

「どうしたんだい?」
「……でも、正しい使い方をするなら、とても有用な魔法かもしれない……」
「正しい使い方って?」

 ジェシカは天井を睨みながら、思いついたことをつらつらと語る。

「今日入学式が終わったあと、教室までセシルを迎えに行ったんだけど、人が多くてなかなか見つからなかったの。ああいうときに便利だと思う。それに、これからセシルの行動範囲はどんどん広がっていくだろうから、居場所を常に知れると安心だわ」

 突然のことに、ハンスはあっ気に取られるてしまった。

「まあ、そうだろうねえ……」
「でも、大前提として、お互いに了解した上で繋がないといけないわ。糸の両端を、互いの腕に結んだ時点で魔法が発効する? ううん、対になってるブレスレットをふたりが身につけたら? でも、それだと小さな子どもなんかは失くしちゃう可能性も……」

 ハンスは、そんなジェシカの様子を微笑みながら眺める。

「そうだわ、紐がいいかもしれない。対になってる紐よ。各々が結び付けられると同時に、結び目同士に糸が張られるの。それなら結ぶのは手首でも足首でもいいもの。足首なら靴下で隠せるしね。それと、紐を身につけている人には常に糸が見えるようにするの」

 ジェシカは楽しそうだ。

「ね、完璧じゃない?」

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