せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
自分が言い出したくせに、狼狽えた。
──えっ、私が⁉︎
──君が。
──あなたの考えた魔法なのに?
──僕が考えたのは、犯罪防止どころか、ストーカーを量産してしまうような魔法だっただろう? これは紛れもなく君のアイデアだよ。
──で、でも、私には無理だわ!
──確かに、販路や宣伝をどうするかという問題があるか。なら、勤め先で相談してみたら?
ハンスの案は、一工員に過ぎないジェシカにとってはファンタジーのように聞こえた。
──誘拐を防げて、救われる親子がきっといるよ。
しかし、そのひと言に背中を押された。
ハンスは、ジェシカのプレゼン練習にも付き合ってくれた。
子どもをもつ母親目線からみた有用性だけでなく、材料は紐のみで安価であることや、使い捨てのためリピート購入が期待できることまで盛り込んだ。
──うん、理路整然としていて説得力がある。これに乗らなかったら経営者失格なくらいだよ。あとは、君にしっかりロイヤリティが支払われるように交渉するのを忘れないようにね。
──えっ、そんな‼︎
──大事なことだよ。僕が働く国立研究所だって、民間に協力することがあるけど、寄附って形に変えて報酬はやっぱりもらうよ。
──そうなんだ。でも、お金ももちろん大事だけど、第七班の待遇改善のほうがうれしいかもしれない……
──どういうこと?
(うっかり失言してしまったわ)
ハンスに話すのは恥ずかしかった。
自分がそんな境遇にいると知られたくなかった。
同じ魔法学校の生徒だったときには、平等な立場だった。
選抜科と普通科という違いはあった。
けれど、異なるのは発展的な授業を追加で受けるか否かということだけ。
基本的には同等に扱われた。