せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
そうして始まった講習会。
第七班の皆を集めて、まずは商品の紹介をする。
皆の視線は、前に立つジェシカに一点集中だ。
その中には直属の上司である班長まで含まれている。
ジェシカの講師を務める様は、実に堂々としたものだった。
講習会の直前までは、押し寄せてくる不安にペシャリと潰されそうだったにも拘らず。
話し始めるとすぐに好意的な反応が返ってきて、楽しくなってきたのだ。
全員に配付できるように、事前に用意しておいた試作品を配る。
「ねえ、私とペアになってくれない?」
「わっ、見えた、見えた!」
「面白いね」
続いては、魔法の構築方法を説明する。
これに使う図解の作成には、特に時間を割いた。
「えっ、思ってたよりもずっと簡単!」
「これなら私でも何とかなるかも⁇」
ガッツポーズしたくなる。
正直、ハンスが最初に州立図書館でジェシカに対して使った魔法だったら、第七班にはお手上げだっただろう。
ジェシカに気づかせることなく、ジェシカの手首に直接糸を巻きつけ、そして再会したあの日から入学式までジェシカとハンスを繋ぎ続けたのだ。
もしかしたら、第二班ですらその習得は怪しいかもしれない。
それほど高度な魔法だった。
しかし、その魔法を可能な限り簡易にした。
これに関しては、ジェシカがいたからこそできたことである。
ハンスには、そもそも魔法を簡易にするという発想すらなかった。
本人には簡易にする必要性など全くないからだ。
それに対してジェシカは、セシルの要望を叶えるために様々な魔法を独学で学び、セシルにも身につけられる形で教えてきた。
正にその経験のなせる技である。
──術式のここが私には難解すぎるわ。手間だけど、こんなふうに3段階くらいに分割できれば、私でも何とかなると思うの。
──分割か……なるほどね。
ジェシカの発想に、ハンスはたびたび感心してくれた。
ジェシカはそれがうれしかった──