せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
ところが、
「ジェシカだったらなれたんじゃない?」
「そうだよね。第七班でなくてもやっていけそうなくらい魔法が使えるし」
「教え方だって上手だもんね」
「きっと人気の先生になってたと思う!」
(皆、言い過ぎだわ)
うれしかったはずの賛辞は突如として妙にザラついて聞こえ始める。
これ以上聞き続ければ、せっかく癒えたはずの古傷が、またぱっくりと開いてしまう。
そうして、やっぱり教師になりたかった、という想いに捕らわれてしまうのだ。
教師になれなかった後悔に襲われる前に、ジェシカは過去の憧憬を無理矢理振り払う。
「皆ががんばったからよ。初日からとても順調だわ。でも、新しい魔法を使って疲れたんじゃない? 今日のはここまでにしましょう。ほら、時間だって……」
言いながら気づく。
(もうこんな時間! 大変だわ‼︎)
家では、セシルがひとりでジェシカの帰りを待っているはずだ。
外が暗くなっても母親が帰って来なければ、さぞ不安だろう。
「ジェシカ先生、ありがとう」
「明日もよろしくね」
「私、家でも練習してくるから、明日見てくれる?」
疲れなんてなんのその。
第七班の表情は明るい。
どの瞳にも希望が点っている。
未来を信じているのだ。
ジェシカは内心焦りながらも、皆に合わせて笑みを作る。
「もちろんいいけど、くれぐれも無理はしないで。しっかり休むことも大事よ。それじゃあ、また明日ね」