せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

16. ジェシカとハンスの恋

 ハンスの微笑みに、ジェシカの不安はかき消えてしまった。

(他人を尊重してくれる人なんだわ)

 さっそく考えを聞いてもらうことにした。
 不器用なジェシカは、細かく手順踏み、ときには回り道かもしれない方法で、結論に辿り着こうとしていた。

 ハンスなら、最短ルートであっさり結論に至るのだろう。
 しかし、ハンスはジェシカの説明を真剣に聞いてくれた。

 ようやくひと通りの説明が終わったところで、最初のステップに戻ると、順々に疑問点を訊ねてきた。
 そうしてジェシカの返答に矛盾点があれば、指摘し適切なアドバイスやヒントを与えてくれた。

 ハンスの教えてくれたことが難し過ぎて理解できないときには、ジェシカからも質問した。
 するとハンスは呆れることなく、うんと考え、ジェシカにも分かるように説明し直してくれた。
 ジェシカは夢中になってメモを取った。

 ハンスと話しているうちに、思考はどんどん深まっていく。
 はじめての感覚で、新しい世界が開けたよう。
 はっきりいって楽しかった。

 図書館の閉館時間が訪れたとき、ハンスは言った。

「明日、続きをできるかな?」

 ジェシカに頷いてほしがっているように見えた。
 気のせいかもしれないと思った。
 そう思いたいからそう見えるだけで。
 しかし、そう疑って見直したが、やはり義務感からではなさそうだった。

(ひょっとして、ハンスさんも楽しかったと思ってくれてる? だから、明日もって訊いてくれてるの⁇)

 この短時間だけで、魔法の知識や才能に天と地ほどの差があることを痛感させられていた。
 けれど、ほかの部分ついては、ジェシカと変わらないのかもしれない。
 等身大のハンスを知れたようで、うれしかった。
 ジェシカはこの瞬間、ハンスのことを友達認定した──

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