せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

 それ以降、ジェシカとハンスは図書館で会えば、近くの席に座るようになった。
 ジェシカが課題をしていればハンスはアドバイスし、ハンスが読書をしていればジェシカは感想を求めた。

 約束していたわけではない。
 けれど図書館に通うスケジュールを、何となくお互いに把握し合っていた。
 図書館内だけの友情。

 ジェシカはこのことを誰かに話したことはなかった。
 ズルいと思われたくないとか、嫉妬されたくないとか、そういった理由ではなかった。
 上手く説明できないが、どうしてか知られたくなかったのだ。

 ハンスもいつも図書館へひとりでやってきていたことを考えると、ハンスもまた誰にも言わなかったのだろう。

(ハンスさんもこの放課後の過ごし方を気に入ってると思っていい?)

 そうだったらいいと思った。

 もちろん、図書館の利用者はふたり以外にもいたのだから、そのうちの誰かが漏らすことだってできた。
 しかし、ひとりとしてそうしなかったのは、放課後の図書館だけにある静謐を好む生徒ばかりだったからなのではないかと推察する。
 ハンス目当ての女子生徒が、図書館に押し寄せることを望まなかったのだろう。

 こうしてふたりの時間は守られ続けた。

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