せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです

17. 学校生活

(計画通りにはそうそういかないものだな……)

 ハンスは職員室で深くため息を吐いた。
 彼を憂鬱な気分にさせたのは、昨日ヨルデン州から届いた手紙だった。

(いや、むしろ始めが上手くいき過ぎだっただけなのかもしれない)

 ジェシカを偶然にも見つけ、セシルの通う学校の非常勤講師となり、毎週末ともに過ごし──

(ああ、でも同居もきっぱりと断られたんだった……)

 自ら追い討ちをかけるように、哀しい出来事を思い出してしまった。

 焦るな、と自分に言い聞かせる。
 ジェシカを探し回っていた過去の7年間を思えば、このくらいの停滞はたいしたものではない。

「スティルロッド先生、どうかされましたか?」

 教頭が声をかけてきた。

「いいえ、何でもありません。朝から授業が立て続けに入っていたので、少し疲れただけで」
「学校での仕事にはまだ慣れませんか?」
「難しいですね。自分のペースで進められる研究所とは、ずいぶん勝手が違いますから」
「でも、じきに慣れますよ」
「そうだといいですが」

 愛想笑いを浮かべながら頭を下げ、職員室を後にする。

 ジェシカにセシルの学校での様子を見ておく約束をしたはいいものの、週1回だけの非常勤ではすぐにそのチャンスはやってこなかった。
 出勤できたらできたで、今度は1限から3限まで授業で埋まっていた。

 そうして、ようやくセシルの教室を覗きにいく時間が取れた。
 教頭とのお喋りで浪費してしまうわけにはいかない。
 今のハンスにとっては、過去の自戒も含めて、ジェシカ以上に優先すべき対象などありはしないのだ。

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