せっかく凡庸な彼女が自ら身を引いてくれたのに、天才魔術士はそれを許すつもりがないようです
「オリバーさん!」
ロペス先生に名前を呼ばれて、オリバーは小さな体をますます小さくした。
「お昼休みに先生とお話しましょう」
「はい。でも……」
「何ですか?」
「セオドアくんとジュリアンくんも一緒にやりました」
自ら共犯者をバラしてしまう辺り、いかにもまだ1年生らしい。
「セオドアさん、ジュリアンさん、それは本当ですか?」
「はい」
「ごめんなさい」
「では、先生と3人でお話しましょう。いいですね?」
すっかりしょげ返っている。
ハンスは彼らの担任でも同級生でもないのだ。
彼らへの指導はロペス先生に一任したほうがいいだろう。
ハンスはセシルの肩にそっと手を置いた。
最近元気がなかったのは、このことが原因なのだろう。
そうならば、今回がはじめてではないはず。
きっとほかにもやられた物がある。
「ほかに壊されたり汚されたりした物があるなら、僕のところに持っておいで」
笑顔になるだろうと思った。
しかし、口をへの字にして、泣くのを堪える。
(どうしてだい⁇)
気にはなったが、いつまでも1年生も教室に居残っているわけにはいかない。
今はまだ4時限目の途中なのだから。
セシルが自分の元へやってきたら、そのときに訊ねればいい。
ハンスはロペス先生に軽く会釈して、職員室へ戻ることにした。
廊下に出てまもなく、ロペス先生が声を張るのが聞こえてきた。
「では、授業に戻ります。皆さん、教科書28ページを開いてください」