光王子と月夜のシンデレラ
◆月の章②七夕のチャイナドレス
今宵は七夕――月明りに照らされた赤い提灯が幻想的な夜の横浜中華街。

「い、今宮くん……どうしてまたこんなことに……」
「クエストだから」
「そうでなくて……」

中華街の格式あるレストランに今宮くんと2人で来ている。
目的は、レストラン内の大きな広間にて開催されている立食パーティーだ。
会場の中央においしそうな中華料理がいくつも並んでいる。

この会場内に飾ってある陶磁器が偽物にすり替わっているのでは、とのクエストを受け、例によって今宮くんのおじいさんの招待状を使って入場した。
今宮くんのおじいさんのすごさはもう突っ込まないでおく。

そんなことより、大問題なのは本日のドレスコードである。

今、私はチャイナドレスを着ている。
女性はチャイナドレス指定なのだ。今宮くんを始め、男の人は普通のスーツなのに。

しいちゃんが準備してくれた赤地に金色の牡丹の刺繡が入った王道のチャイナドレス。
髪型もしいちゃんがチャイナドレスに合うように2つのお団子にして、赤と白の花の髪飾りを付けてくれた。
しいちゃんのセンスはさすがで、このドレスと髪型は可愛いのだけれど……
いかんせん体のラインが出るし、左足には思いっきりスリットが入っているし、コスプレ感もあって恥ずかしい。

「お嬢ちゃん似合ってるね、可愛いよ」
「ひっ!あ、ありがとうございます……」

会場内ですれ違ったおじさんに声をかけられた。
お酒のにおいがするし、酔っぱらっているのだろうけれど、一応私も女の子。可愛いと言われれば少しは嬉しくなる。

「酔っ払いの言うことだからね」
「わ、わかってます!」

簡単な女だね……とも言いたそうな視線を私に向けている。
その顔すらイケメンなのが何とも言えないけれど、悔しいから、ちょっとだけ言い返してみる。

「そうだとしても!可愛いって嬉しい言葉なんですよ」
「ふーん、可愛いね」
「……それは違います」

こっちの反応を面白がるようにケラケラ笑っている。
う……倍返しされた気分。
悔しいけれど、今宮くんとこんな風に話せるようになるとは。1週間前の私が知ったらビックリしてひっくり返ってしまうかもしれない。
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