光王子と月夜のシンデレラ
「大丈夫?」
「う、うん……ありがとう」
「とりあえず、これ思いっきり飲んで」
「えっ!?」

パーティー会場を出て、そのレストランの建物内の1階にあるロビーのベンチに座ったところで、即座に今宮くんは水の入ったペットボトルを渡してきた。

「え、でも味をきちんと把握できてなくて……水飲むとわからなくなっ……」
「いいから!」

初めて聞く大きな声に体がビクッとしてしまう。

「あ……悪い。でも……嫌なら無理矢理にでも飲ますけど」
「無理矢理って……」
「口移しとか」
「はっ……!?」

真剣なまなざしで私の顔をのぞき込んでくる。
こんな顔知らない……こんなにドキドキする私の心臓も今まで知らない……

「じょ、冗談だとしても……でっできないことは言わない方がいいですよ!」
「冗談じゃないし、できるけど」

そう言って更に近づいてくる。
みんなパーティーに夢中なのか、人が通る気配はない。
静かな空間で、ロビーにある時計の秒針の音だけが、心臓と呼応するように聞こえてくる。いや、心臓の方が速いか。

恥ずかしさと緊張といたたまれなさが限界に達し、私は顔を背けた。


はあ……とため息をつきながら、今宮くんは元の位置に戻るように私から離れた。

「嫌なら早く飲んで」

できればちゃんと味を把握したかったけれど、あまりの剣幕に渋々従い飲み干す。
一気に飲みすぎて少しむせてしまった私を見て、今宮くんは私の背中をさすってくれている。

「……大丈夫そうなら、話聞かせてもらえる?」
「あ、うん……さっきの料理、何か薬が入ってる……と思う」
「薬?」
「知らない味だから、何かはわからないですけど……」
「食べたことない調味料とかじゃなくて?」
「私、この体質だからか薬と鼻が敏感で……」
「……」
「体と鼻が反応しているから、薬だと思います。多分だけど、依存性や興奮を高めるような……あの料理をまた食べたくなるように、気分が高揚するように……そんな成分だと思う」
「な!あんたは大丈夫なのかよ!?」

薬に驚くことよりも真っ先に私の心配をしてくれている。やっぱり今宮くんは優しい。

「今宮くんのおかげで大丈夫です。ちょっと動悸が早いくらいで、すぐ治まりそうなので」
「よくないだろ、それ……」
「あっそれよりも!会場に戻って、他の人に食べないように伝えな……」
「待って、さすがにそれは難しい」
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